■第8号(1993.4発行) 住宅特集

木造住宅の未来形「高気密・高断熱住宅」
ダニ追放で健康住宅を極める




1.木造住宅の未来形「高気密・高断熱住宅」
  1)知っておきたい先端省エネ住宅の問題点
  2)家の健康に新空調システム
2.ダニ追放で健康住宅を極める
  1)ダニがもたらす現代病「アトピー性皮膚炎」
  2)健康住宅のキーワード 木造りをセントラルクリーナー



■1.木造住宅の未来形「高気密・高断熱住宅」
昨年2月の「住宅省エネ新基準」告示を受けて、基準をクリアする住宅に対して住宅金融公庫の割増融資が実施されることになりました。これによって、省エネ住宅の意義が改めて注目されると同時に、前号で述べたように、これからの住宅づくりについて一つの方向性が示されることになりました。これからの省エネ住宅として、住宅産業界が熱い視線を注いでいるのが”高気密・高断熱住宅”です。早ければ今年度内にも「高気密・高断熱省エネ基準」の導入が予定されており、省エネによる環境への配慮が、一層はっきり打ち出されることになります。

1)知っておきたい先端省エネ住宅の問題点
「家は夏をむねとすべし。」
吉田兼好の一文からもうかがえるように伝統的な日本の住宅は風通しの良さを重視した開放型家屋のため、エネルギーロスが大きいのはご存知のとおりです。
最近になって、環境問題の高まりから、石油を中心とした化石燃料の削減すなわち省エネの推進が緊急課題としてクローズアップされることになりました。
建築技術の進歩やサッシの普及で、住宅の気密性は高まってきていますが、大きな省エネ効果を生むためにはそれだけでは不充分で、熱エネルギーのロスを抑える断熱性能にも注意をはからう必要があります。しかし、一方で断熱性の向上は、壁の内部や天井裏での結露の発生を招き木材寿命を縮めるという欠点もあります。
高気密・高断熱住宅は、壁体内換気システムで結露を防ぐ工夫のほか、構造的特徴として@放熱ガズが大幅に減少するため省エネ効果が上がるA壁や床の表面温度が室温とほぼ同じために輻射効果が大きく快適感が高い。B騒音の侵入と屋内で発生する音の流出を防ぐ遮音効果が高い――という利点を持っています。
このように良いことずくめのように見える高気密・高断熱住宅ですが、気密性が良すぎるために、換気不足に陥りやすいという問題点もあります。
風通しを重視した従来の木造住宅の自然換気回数が1時間あたり3回であるのに対し、高気密・高断熱住宅では0.3回程度に抑えられているため、炭酸ガス、タバコの煙、アルデヒドなど、日常生活で発生する汚染物質が室内に滞留しやすく体に影響を与える可能性が高い点が指摘されています。先端を行く快適な省エネ住宅のはずが不健康住宅になりかねないのです。

2)家の健康に新空調システム
人間一人の体から放出される水分量は、1日に約1.5kg以上といわれています。4人家族だと6kg以上。さらに家事、炊事、入浴時などに放出される水分が加わるので、充分な換気を行わなければ大量の湿気が住宅内に滞留してしまいます。
しかも、単に換気するだけでは、外気の影響を受け、冷暖房エネルギーのロスが生まれます。これではせかっくの高気密・高断熱住宅の意義が半減してしまいかねません。
「人と自然と建物が高度に調和する空間」を目指す松下精工鰍ナは「高気密・高断熱住宅の機能を最大限に高めるには、建築時の計画的な”冷暖房・換気システム”の導入」(同社換気空調事業部)によって換気・冷暖房はもちろん空気清浄、湿度、気流までもコントロールすることを提唱しています。
ダクト方式といって換気と冷暖房を同時にこなす新空調システムを高気密・高断熱住宅に組み込むことで、エネルギーロスがなくなり「低コストで全室を常時冷暖房しながら部室の空気をきれいに保ち一日中気持ち良く過ごすことができます」(同)
「一日中しかも全室空調と聞くと贅沢な気がすると思いますが、各部屋の温度が同一に保たれると家の傷みが少なくなります。なぜかと申しますと、例えば冬季に部屋別の暖房をすると、温度の高い部屋、低い部屋ができます。
ところが住宅内の水蒸気は、水蒸気の少ない部屋へ流れるので、温度の低い部屋に結露が生じてしまうのです。それを解消し、家を長持ちさせることができるのも、ダクト方式による換気・空調システムの良い点の一つです(同)
高気密・高断熱住宅は、熱伝導率の問題から、構造体に鉄を用いる工法よりも、木材を用いる工法の方が有利です。換気・空調システムをビルトインさせることで、木造住宅の可能性はさらに大きなものになるのではないでしょうか。

■2.ダニ追放で健康住宅を極める
開放型から密閉型へ。この20年余り、冷暖房機器が急速に普及し、それに伴い、住宅の気密化が進み同時に、ベッド、ソファー、カーペットといった洋風家具が、日常生活に欠かせないところまで、生活様式は変化しました。しかし、快適さを追求したはずの現代住宅と生活様式は、保湿性が高くダニやカビなどを発生させやすい環境を作りカーペットやベッドなどはダニに格好の繁殖場所を与えることになってしまいました。そして、ダニアレルギーの問題が今、私達を悩ませています。

1)ダニがもたらす現代病「アトピー性皮膚炎」
いろいろあるアレルギー性疾患のなかでも、最近特に問題になっているのがアトピー性皮膚炎です。
顔、肘、膝などに湿疹ができ、体が暖まると非常にかゆくなります。治るまで時間がかかるやっかいな疾患で、今だに根本的な治療法が確立されていない現代病の一つです。
これまで食事を原因とする説が強かったのですが、最近の研究ではダニとの因果関係が注目されています。
ある調査によると、昭和30年代に室内の塵1g中に500匹だったダニが、昭和57年には1500匹へと急増。ダニが原因のアトピー性皮膚炎は地方よりも気密性の高いマンションやビル等が多い都市部でより顕著な増加傾向をみせています。快適性追求の落し穴がアトピー性皮膚炎なのです。
従来は幼児期から学童期に羅患しても、成長すれば自然に治るとされていましたが、近年では成人患者が急増し、しかも治りにくくなっているようです。こういった成人型患者の90%がダニを中心とした抗原に強い反応を示すというのです。
では、どのようにすれば住まいからダニを追求できるのでしょうか。

2)健康住宅のキーワード 木造りをセントラルクリーナー
ダニの駆除は”掃除”しかないといわれています。しかも漠然と掃除するのでは何の効果もありません。兵庫県西宮市が作成した掃除指示書によると、毎日の通風と晴れた日の布団干しから、週1回の照明器具、押入れへの雑巾がけなどをこまめにおこない、干した布団は叩くとダニが内部に潜るので1uにつき20秒間掃除機をかけるといったことが細かく示されています。
つまり、これだけ掃除をしないとダニの大量繁殖を招くというのです。
ところが残念なことに、せっかくの掃除も吸い込んだダニのバラバラになった手足は、掃除機の集塵フィルターを通って、排気口から再び室内に排出されてしまうのです。気密性の高い住宅であれば室内に滞留するのです。
この問題を解決するのが、掃除機本体を家の外に設置する”セントラルクリーナー”です。
家を建てる時に配管を床下に張り巡らす工事が必要ですが、セントラルクリーナーなら吸い取ったダニが屋外の本体に集められるため、排気口から室内にでることがありません。また、室内にある差し込み口にホースを差し込むだけなので、前述の掃除指示書にある照明器具や、一般の掃除機では掃除しにくかった場所も、長いホースを使って楽々と掃除できるという利点があります。
これまで多くのセントラルクリーナーを設置してきた松下電器産業椛|除事業部では「健康に対する意識が高まっており、屋外排気システムを持つセントラルクリーナーは、積極的に健康提案できる掃除システムとして皆様のご理解をいただいています。」と話しており、ますます気密化するこれからの住宅においてその機能がクローズアップされることになりそうです。
また、ダニ発生の主な原因の一つに湿気がありますが、湿度のコントロールま木造住宅の最も得意とするところです。
住宅の気密化、断熱化は一層進みそうですが、高気密・高断熱住宅に換気・冷暖房システムセントラルクリーナー等を組み込んだ木造の新住空間は、結露やダニとは無縁の、一年中健康で快適な木の住まいを提供してくれるでしょう。