■第7号(1992.10発行) 省エネ・環境特集

地球にやさしい住宅をめざそう
花博跡地に環境保全技術のモデル建築
建設業そのエネルギー消費と炭素放出量を考える




1.地球にやさしい住宅をめざそう
  1)住宅分野も環境問題に対応
  2)省エネから環境共生へ
  3)多彩な省エネシステムで地球にやさしい住宅を
2.花博跡地に環境保全技術のモデル建築
  1)コンセプトは「人と環境にやさしい建物」
  2)ローカルエネルギーを効果的に活用
3.設業に、そのエネルギー消費と炭素放出量を考える
  1)資源エネルギー消費で環境に大きな負荷
  2)地球にやさしい木造建築



■1.地球にやさしい住宅をめざそう
今年8月、ブラジルのリオデジャネイロで「地球サミット」が開催されました。国連が、初めて地球環境をテーマとしたこの会議で、各国の首脳が活発な意見を交し、地球規模的な資源保護と環境破壊防止の方向性が明確に示されました。いうまでもなく、経済大国ニッポンがそういう対応を見せるのかが、世界中の注目するところとなっています。そんななかにあって、建築資源使用者である住宅、建築業界はもちろん、提供側にも新しい動きが見えはじめてきました。今回は、「省エネ・環境特集」と題し、業界内の様々な動きと今後の指針などについてレポートします。

1)住宅分野も環境問題に対応
地球温暖化、オゾン層破壊、酸性雨など、地球規模での環境問題が国際的課題となっている現在、住宅そのもののあり方と、そこでの住まい方の両方から環境問題に対処し、地球にやさしい住まいを実現させていこうという試みが、建設省を中心に始まりました。
地球環境への調和をめざした「環境共生住宅」の研究がスタートしたのです。

2)省エネから環境共生へ
これまでは”省エネ”というと、単に電気やガスなどのエネルギーを節約することと考えられてきました。
住宅分野においては、太陽熱を利用したソーラーシステムや、断熱材の使用、気密性の向上による冷暖房費の節約などがその代表とされてきたのです。
しかし最近になって、省エネは単なる節約だけでなく、私達が住む地球の自然環境保護と密接な関連があるとして、石油ショック以来、再び見直されてきました。
こうした背景から、建設省とエネルギー会社、住宅メーカーなどが協力し、地球環境問題に立脚した、まったく新しい省エネ住宅のモデルを確立させていこうという動きが出てきたのです。
これが「環境共生住宅」です。
この構想は、健康性、快適性、安全性に優れた居住環境を確保しつつ、水循環、廃棄物のリサイクル、エネルギーの効率的利用、地域特性に応じた建築工法の採用などで環境にやさしい住宅をつくろうというもので、特に地球温暖化の防止に向け、二酸化炭素の排出量の少ない生活の確立と省エネの推進を目指しています。
つまり、自然環境を破壊することなく、自然の風光や樹木、森林などを有効に活用することで快適な住環境をつくり出し、資源を損うことのないエネルギー利用を図ることで自然と調和、環境と共生した住宅を開発しようというのです。

3)多彩な省エネシステムで地球にやさしい住宅を
「環境共生住宅研究会」(EARTH・SWEET・HOME)という、このプロジェクトに参加しているのはエネルギー、化学、住宅、ゼネコン、電機といった幅広い業種からの25社。
3年間の研究期間を設定し、平成5年度末までに具体的な環境共生住宅のモデルプランづくりと、公共住宅などにおける実際の建築を進めていく計画です。
具体的には、石油など、化石燃料の削減による地球環境への負荷の軽減について、様々な角度から研究が行われている段階で、今のところ住宅の断熱性と気密性を極限まで高め、エネルギーロスを大幅に軽減した上に、太陽電池システムを採用することで化石燃料の使用を低減させ、自然エネルギーで自給することが確認されています。
この他にも、雨水や風呂の水の再利用環境装置の開発や、サンルームを設置して採光、通風、換気をよくするボイド(空隙)を設けるなどの建築面の工夫も検討されています。
また、台所などで発生する生ゴミをコンポスト(推肥)化して家庭菜園に活用するシステムや、道路の未舗装による地下水汲み上げシステムなど、多くのアイディアや、ちょっとした工夫が、現時点でのポイントとして揚げられています。
こうした街づくり、家づくりのモデルになると思われる住宅がドイツにあります。フランクフルトから列車で2時間のカッセル市に「環境との共生」をテーマにした住宅があります。そこでは、雨水が地中に帰るようにと道路を舗装しないのはもちろん、家を建てるために切る木の本数を必要最小限にとどめる設計や、屋根の緑化など様々な工夫がなされています。この街が、日本にとって、環境と調和した住宅のお手本となるのかも知れません。
また、建設省は来年度から環境共生住宅づくりの支援制度を予算に盛り込む方針で、これが実現すれば、日本も本格的なエコロジーの時代を迎えることになるでしょう。

■2.花博跡地に環境保全技術のモデル建築――UNEP環境技術センター
発展途上国で急速に進む都市公害や環境破壊を抑制するために、先進国の持つ環境保全技術を途上国へ移転させようという国際機関が日本に初めて誕生。施設が大阪・鶴見緑地に置かれることになりました。 計画では、新たに建築される施設そのものに都市計画に関する実験設備の機能を持たせ、省エネ、環境への配慮を全面に打ち出していく方針で、早くも来年夏の完成が待たれています。

1)コンセプトは「人と環境にやさしい建物」
建設が予定されているのは、大気や海洋・淡水資源、森林、生物など、国際レベルで環境問題に関する活動の調整と促進を任務とする国連環境計画(UNEP、本部・ナイロビ、加盟58ヶ国)の下部組織、UNEP国際環境技術センターで、大阪市鶴見緑地・花と緑の国際博覧会跡地、迎賓館の東隣に、鉄骨2階建、延床面積2,640uの規模で建設。 「人と環境にやさしい建物」をコンセプトに来年8月末の完成を目指して、今春着工が予定されている同センターは、その施設そのものがショールームの機能を果たし、人と環境にやさしい建物が、広く一般の人にも体験できるように構成されます。
建築上の工夫としては@自然エネルギーのみを有効活用し、自然風土に根ざした技術を導入した外部アトリウム(吹き抜け)を有したパッシブな空間A居住環境を100%人工的にコントロールする、先端技術によるアクティブ空間B前記2つを融合させた内部型アトリウムを持つ空間――の3つのゾーンに建物を区分して、それぞれ最適な利用形態を整えます。
つまり@では、機械的な手段を用いず、自然の風や熱、光などのエネルギーを吹き抜けや中庭などの建築手法で取り入れて快適環境を追求し、Aでは太陽電池、燃料電池の利用などに加え、二重壁の利用などで建物の気密性を高め、照明、空調を効率的にコントロールすることで省エネ効果を高めます。そして、これら自然と都市建築物の理想的な融合のスタイルがBの空間となるのです。

2)ローカルエネルギーを効果的に活用
また、建築設備上の工夫による技術としては、近くの鶴見清掃工場に集められるゴミを利用したゴミ発電電力と、前途の太陽電池、燃料電池によって、同センター内の消費電力のすべてをまかなうなど、都市型エネルギーに頼らず、身近なローカルエネルギーを活用することで環境に配慮していきます。
この、燃料電池というのは、水の電気分解の逆の原理により、水素と酸素を反応させて電気と熱を作る装置で、例えば都市ガス(天然ガズ)を改質して水素をつくり、空気から分離して得た酸素を反応させて直接エネルギーを得るもので、発電効率の高いシステムとされています。
同センターではこの他にも、給排水衛生設備において節水タイプのものを採用するのをはじめ、散水に雨水を利用することや、給湯に燃料電池の廃熱を利用することを盛り込むなど、まさに省エネ、環境対応建築物のショールームにふさわしい計画がビッシリ。
また、これ以外にも地熱や風力など、小規模・分散型エネルギーの開発応用を手掛けるのをはじめ、同センター本来の業務として、大気や騒音、都市排水・緑化・廃棄物、エネルギーなどを対象にしあたらゆる技術の研究開発を情報の集積・構築を目指していきます。これらのデータベースは、日本ばかりでなく世界の環境保全に貢献する貴重な技術情報として、世界各国の人々や動植物、天然資源の繁栄に有効活用されていくのです。

■3.設業に、そのエネルギー消費と炭素放出量を考える
建設業界はこれまで、多くの資源とエネルギーを投入して建設構造物を造り上げ、社会に提供し続けてきました。しかし、地球的規模の環境保全の立場から、省エネ・資源対策が求められる今、建設という行為が自然環境に対し、どれだけの負担を与えているかを知り、建設業界としてどのような社会的責務を果たし、今後の課題となる「地球にやさしい建築物」の方向性を示すことが必要になってきました。

1)資源エネルギー消費で環境に大きな負荷
大林組地球環境部による最近の研究で、建設業界が年間に消費する資源量は、石材、セメントが国内総生産のほぼ100%におよぶのをはじめ、木材=70%、銅、アルミ=各40%、鉄=30%と、非常に高い比率に達しており、環境問題の対策を検討するうえで大きな負担となっていることが判明しました。
この研究は、昭和60年度の産業関連表を用いて資源消費量を割り出し、各資材ごとの生産、運搬などに必要なエネルギー(石油、電気など)の消費量と、そこから発生する炭素量を計算したもの。 それによるとエネルギー消費に関しては、建設関連で日本全体の36.8%をも消費していることになります。
地球環境部では「消費エネルギーのうち、施設運用に係わる部分を省エネ技術の更なる開発と実施で削減するとともに、全体の8.7%を占めている資材の製造において、製造エネルギーの少ない資材の選定が不可欠」と、警告しています。
では、どんな資材を使用することが望ましいのでしょう。
科学技術庁による住宅用資材の製造エネルギー調査(表@)を見れば、数ある建築資材のなかで木材が最も優れた省エネ資材であることがわかります。コンクリートも低い数値になっていますが、立方メートル当たりの消費量はもちろん、その主材料であるセメント製造時によるエネルギーを必要とするため、結果的にkg当たりでも木材の倍近いエネルギー消費することになってしまいます。
さらに細かな、製品ごとの消費エネルギーの倍率調査(日本住宅・木材技術センター)では、例えばアルミサッシは木製サッシの31倍。アルミドアは木製ドアの127倍。組足場に使う鉄パイプは丸太の8倍ものエネルギーを消費することが報告されています。
これらの結果から、もはや建設業界にとっては、木材抜きに省エネは語れないといえるのではないでしょうか。

2)地球にやさしい木造建築
エネルギー消費が、化石燃料の使用による酸性雨の主要因となる一方で、これから述べる二酸化炭素は、地球の温暖化、砂漠化の元凶だろうと考えられています。そして、前出の地球環境部の研究では、資材生産をはじめとする建設行為による炭素発生量が日本全体の34%を占めており、この部分でも自然環境に与える影響が想像以上に大きいことを明らかにしています。
同部ではさらに、資材生産から完工までの単位床面積当たりの炭素発生量を、木造、鉄筋、鉄骨鉄筋といった工法ごとに推定することで、積極的な炭素放出対策の指針としています。
木材そのものは、本来炭素を固定しているため、固定炭素量をマイナスの放出量として計算すると、木造建築の炭素発生量はマイナス2kg/uという驚くべき数字になってしまうそうですが、ここでは、木材といえども最終的には燃焼などで二酸化炭素を発生するということで、固定炭素量を0として算出しています。
それによると、1平方m当たりの炭素放出量は、最も少ないのが当然木造建築で79kg。次いで鉄骨、鉄筋コンクリートの順で最も多いのが鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造りの167kgと、木造の倍以上の炭素を発生させています。炭素の固定を考慮しなくてもこのとおりで、木造建築がいかに地球にやさしい工法であるかがおわかりでしょう。
同部では「他の資材とは逆に、木材はその成長過程で炭素を吸収、固定化する。都市部の中・高層建築は無理としても、SRC造りでも鉄やセメントの使用量を減らし、内装を石油化合物から木材に切り替えるのが望ましい」としており、消費エネルギーでの有効面からも、構造体としての木材の使用の拡大を、地球環境への負担を低減させる具体的な方向性として打ち出しました。
これまでとかく非難を受けがちだった環境保護の立場から、一転木材使用の利点が示されたわけです。木材の新たなスタートはここからはじまるのかも知れません。